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2021年07月18日

PRCのアンテナの話し

回路のエネルギーを電磁波のエネルギーに変換して空間に放射するのが送信アンテナであり,逆に電磁波のエネルギーを吸収して電気回路のエネルギーに変換するのが受信アンテナでありPRCのアンテナは基本この二つの使い方を同じアンテナにて使用している。PTTを押し込むとPRCは送信状態になり、電磁波エネルギーとして空間に放射し、PTTを離すと受信アンテナとしての役割を果たす。

無線アンテナでは波長に合わせた長さを必要とし、それらを単一のアンテナにて使用するためにPRCにはバリアブルコイルやバリアブルコンデンサをアンテナ回路に挿入させ、電気的にアンテナの長さを最良の状態にマッチングしている。PRC-25や77なんかではA-28ユニットだかがアンテナの波長を調整しており、PRC-10(以下P10)では、アンテナ端子下側あたりにその回路が存在している。

このアンテナのマッチングという概念は主に送信時に重要となる、受信時でもアンテナ長さは関わってくるが、送信と違い長さが違ったことによる無線機本体へのダメージは発生しないからだ、送信の場合、アンテナの長さがマッチング出来ていないと、回路のエネルギーが電磁波のエネルギーへ変換出来ず、最終増幅管(以下ファイナル)へ戻ってくる。この戻ってきたエネルギーはそこらに行く事が出来ないため、熱となって消費される。この熱によってファイナルが故障する可能性が発生する。俗に言う”ファイナルが飛ぶ”という現象だ、この現象を回避するため、RT-505/PRC-25はその他の回路はトランジスタであるが、ファイナルのみ熱に対する耐性が高い真空管が選定された。たま、この空間に放射されるエネルギーと戻ってくるエネルギーの比を定在波比Voltage Standing Wave Ratioとよび、VSWRやSWRなどとよばれ、値が1の場合、100%回路のエネルギーは電磁波のエネルギーとなり空間に放射される。


実験的にネットワークアナライザを利用し計測してみよう。
P10の殻を割って内部のアンテナ端子のコイルユニットにミノムシクリップでネットアナをつなげ、P10を53MHzにし、ショートアンテナを垂直に立てた状態と曲げて丸め、束ねた状態、アンテナをP10本体に短絡させた状態の3種類のVSWRを測定した、また、ショートアンテナは1/4λのホイップアンテナであるため、アースとしてハーネスに付けた状態、すなわち人間と触れた状態にするため、本体に手を付けて計測を行った。この計測ではネットアナと50Ωで確実に結線できていなため、正確性には欠けるがそれなりの数値はでるはずである。

結果
図1.に垂直に立てたアンテナの状態の模式図、図2.にSWR測定グラフを示す。
PRCのアンテナの話し



図1.模式図

PRCのアンテナの話し


図2.計測値


図3.に丸めてテープで留めたアンテナの状態模式図、図4.にSWR測定のグラフを示す
PRCのアンテナの話し


図3.模式図

PRCのアンテナの話し


図4.測定値


図5.に折り曲げて本体に接続しテープで留めたアンテナの状態模式図、図6.にSWR測定のグラフを示す
PRCのアンテナの話し


図5.模式図

PRCのアンテナの話し




図6.測定値



考察
アンテナがまっすぐの状態ではSWRは2.3程度となった、真空管のパワーの15%程度がファイナルへ戻ってくるため、空間へ放出される電力は675mW程度の出力となる、渦巻き状にアンテナを丸めた場合、SWRが8以上となっている、この場合真空管のパワーの80%程度がファイナルへ戻るため、200mW程度の出力となってしまう、最後の短絡状態ではSWRは6程度と、先の巻き状態とくらべると値は低下しているが、グラフは不安定であり、時折10以上の値を出した事もあった、SWRが6の場合は70%程度がファイナルへ戻るため、270mW程度となる。以上の実験より無線機のアンテナを折りたたむ行為は通信に不具合をもたらす可能性が高い、また、無線機を破壊する可能性がある。

考察2.実際の戦闘で丸めている写真とかよく見るのですがどうなんですか??
この問いに対しての明確な答えはないが、画像で検索すると同等以上の量でアンテナを伸ばしているRTOの写真も出てくる、少ない使用例を探しそれを指摘するのは的外れだと私は考える、そして、アンテナをまとめる事についてだが、私なりの考察として、ヘリなどの空中機動や、車両移動時に”一時的にまとめておいた”と考えられる。アンテナがまっすぐに伸びているとヘリに乗る際にロータを損傷する可能性があるからだ、また、強烈なボサを歩く時など送信を行わない時にまとめていた可能性は高い、これらのSWR理論は先に述べたように送信時に発生する問題であり受信時はそこまで深刻な問題にならないからである。そのため、送信する時はアンテナを延ばしていた可能性は非常に高いと考えられる。
最後に、特殊部隊の写真とかで折り曲げたアンテナなどを装着して受話器に話しかけている写真とかあるが、アレはデモンストレーションであって99%そのとき電波を発射していない、戦術通信ネットワークにそんな意味不明な理由で電波を飛ばす行為は特殊部隊隊員なら分かっていると思うが、不用意な電波の発射は敵に位置等を特定され部隊の危機を招くからである。



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Posted by チベットの狐 at 17:10│Comments(2)RTO装備軍用無線機PRC-77PRC-25PRC-10
この記事へのコメント
1コメ!
Posted by yoshifor at 2022年01月12日 16:43
2コメ!
Posted by hifor at 2022年03月09日 19:50
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